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2009-01-22

自由の代償

予測されていた雨雲が、気象モニターをあざ笑うかの

ように緩急つけたドリブルを披露して、

散々じらした挙句に、雑巾から搾り出すような灰色の

雨粒を関東に降らせた。

東北や北海道の読者は怒るだろうが、

三度の中傘をさして歩くのは骨なんだ。

足は震えてくるし、唇は色素を高速で失っていく。

ポケットにいれた熱が飛んだ携帯のフレームが、

布切れ一枚で太ももに張り付くのがにくい日。

そんな冷たい風をよそに、ただただそいつは

立っていた。

周りは真空。

おそらく色んなやつの思いがこの場所を通り過ぎて、

全部を飲み込むでも聞き流すでもなく、

辺りの空気を無差別に吸い込んで、

ただポツリと立っているんだ。

その場所には地層の奇跡によって生み出された

見事な色合いの石が、正確なスクエアにカットされ、

新しい旅立ちの名前をもらって、少年が静かで永遠の

眠りについていたんだ。

この国じゃちょっと前まで喧嘩と火事はなんとやらと

風情を持たせて呼んでいたみたいだけど、

今は自殺と過労死に席を譲っている。

その少年も、毎日当たり前のように起きている

華の一部で、特筆されることもなく、病院で家族に

見守られて死んだじいさんや、長寿をまっとうして

目を瞑るように息を引き取ったばあさんと同じように

並べられ、家族の参拝を受けるのだ。

なあ、死は誰にでも訪れるし、ある意味平等だ。

だけどその直前までの刹那の時間を、おれたちは

一体何を求めて過ごすんだろうな。

少年はその小さな器に何を込めて、

短き永遠を生きたのだろう。

      

         

今日の午前中、群馬の某所に行った。

地方の町じゃありがちだけど、大きな企業が支社や

工場を構えて、雇用や税金の大半を握ることによっ

て、市政への影響力や役所とのズブズブで、

その企業の社員が飲み食いして落とす金で商店街

が成り立っていて、事実上いち企業が町そのものを

支配しちまっている構図があった。

住民の実に三割がその企業の関係箇所で働いてい

て、学生もバイトで携わるし、

その町の中では○○に勤めている人かどうかで

人間が分類されるのだ。

最低なのは子供の世界にまで、そのカスみたいな

バランがさされていること。

高橋くんのお父さんは○○の営業課長です。

鈴木さんのお父さんは工場長です。

教師がそんなことを日常的に教壇から振りまくんだと。

○○に勤めているか、関係していることは良いことだ

って定義を刷り込んでいるのさ。

そんなしきりがされた牧場で放し飼いにされれば、

そこで起こりうる化学反応は、文系のあんたでも

容易に察しがつくだろう。

「田中くんのうちは○○から仕入れをしていないんで

すって、うちの主人が漏らしたのよ」

と高橋君のお母さん。

「うちの主人も言ってたわ。

この町に住んでてよくそんなことが出来るって」

と鈴木さんのお母さん。

母親たちの陰口はコンマ二秒で子供に感染して、

田中さん家の太郎くんはいじめにあうようになった。

そのいじめがどんなものだったのか、

詳細はだれも知らない。

何故って被害者の太郎くんは、誰にも打ち明けること

なく、黄泉の国へダイブしちまったんだから。

少年が自宅近くの団地の広場で、冷たい塊になるまで、

町の住人達はとことん追い込んだのだ。

少年は無言で旅立ったが、相談してたって無駄だった

ろう。役所も教師も全部がグルだ。

彼は彼が持つまだ小さき世界に否定されて、

親が原因でいじめらたことで両親にも相談出来ず、

せめていじめていたグループのリーダーが住む

団地で最後を遂げたらしい。

自由経済って恐いよな。

子供の世界にまで飽くなき欲望を持ち込んで、

たちまち全部をぶっ壊しちまう。

キョウソウリョクの前では、小さき命なんてどうだって

いいのさ。

      

おまえはよく生きた。

両親は太郎くんの墓に最高のキスをして、

また仕事に戻っていこうとする。

記事にするかしないかは任せるといってね。

「どうしてここまでされて町を出なかったんですか」

って最後に聞いたんだ。

別に答えはありふれたものだったよ。

先祖から引きついた商売があるし、それに太郎がいる。

あいつ(の墓)を残して遠くにはいけないってさ。

      

太郎はその短い生涯の最後を、否定されて遂げた。

やつの周りの学校の同級生、教師たち、支配している企業

の社員たち、役所、もしかしたら警察なんかも。

ざっと数千人ってとこか。

数千の否定を訳も分らず打ち付けられて、悲しみの上で

朽ちたんだろう。

だからせめてあんたやおれだけでも、肯定してやりたい。

この国がアメリカの言いなりになって実行してきた

最低の宗教じみた経済と価値観に否定されたところで、

そんなものは逆に嬉しいくらいで、

おれたちはおまえの全部を肯定してやるってな。

       

         

       

こういう町は結構あるだろう。メールにも何度か具

体例をもらった記憶がある。こういう町の隠れた悪

習として、経済界の小さな支配国家と化してしまうん

だ。

選挙なんてやるまでもなく自公が勝ち、住民は事実

上選択の余地を与えられない。今日の記事を読む

と、それも理解してもらえると思う。

おれがどれだけ世論が傾こうと、油断すれば今の支

配者は国民感情だけでは倒せないと言うのも、こう

いう部分があるから。国民が60年間ロボットに成り

下がっていたツケを、こうして何の罪もない命が代償

を払わされる。腹がたって仕方ないよ。

もう良いだろう。おれたちは当たり前の自由を手にする

ために、どれだけの犠牲を払うんだよ。

      

      

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